名護・自然観察日記

名護で出会った生きものを中心に紹介します。

ジュゴンの海 その4

160606干出海草2

昨日は一年で日中最も潮が引く大潮でした。
つまり、ジュゴンの海を歩いて観察できる数少ない日。
そこで、干潮の時間にあわせてジュゴンの海を歩いてきました。






160606干出海草

これはジュゴンの餌となる海草。
花が咲き種を作る種子植物で、かつて陸上で暮らしていた植物がが海に進出した仲間。
ジュゴンがかつて陸上生活から海に帰ってきたのと同じように、進化の過程を辿ってきた植物です。

ジュゴンはこの海草だけを食べるので、運命的な関係にあるといえそうです。




160606食み跡1

そしてこれがジュゴンが海草を食べた跡。
ジュゴンは海底に着いて前進しながら海草を地下茎ごと食べるので、
海底には海草を食べた跡が帯状に残ります。
これを「食み跡」とか「ジュゴントレンチ」と呼んでいます。




160606食み跡2

この日も30〜40本程度の食み跡が確認できました。








090426食み跡3

この写真は昔撮ったものですが、男の子が見ているのがジュゴンの食み跡です。

このようにジュゴンが辛うじて棲める海が、名護市には残っています。
ちなみに、現在日本でジュゴンが確認されているのは、名護市に隣接する東西の海だけ。

この海に絶滅に瀕したジュゴンが生き残っていることは、それだけ豊かな自然が残されている証しでもあります。

このようなわずかに残された豊かな海を潰して、戦争を行なうための基地を作ることは、
愚か極まりないことだと思います。





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  1. 2016/06/07(火) 09:05:24|
  2. ジュゴンの食み跡
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ジュゴンの海 その3

160115食み跡4

ようやく風が納まり、海のコンディションも期待で来そうだったので、
ジュゴンの生存を確認すべく、食み跡のチェックに行ってきました。

海に入ると期待とは裏腹に、海面近くに濁った真水の層があり、視界は不良でしたが、
ジュゴンの食み跡は驚くほど沢山あり、ジュゴンの生存をしっかりと確認することができました。



160115食み跡1

水の濁りは沖に行くほど弱まり、視界が晴た海の草原には、長くて見事な食み跡が横たわっていました。







160115食み跡2









160115フデノホ

沖縄の冬の海は、夏には見られない藻類が姿を見せます。
これは緑色が鮮やかで愛らしいフデノホ。

その間に番傘が開いたように見えるのが、これまたかわいいカサノリです。




160115食み跡3









160115アオヒトデ

海の草原にはアオヒトデもお目見え。
近くで見ると・・・ほぼエイリアン。






160115食み跡6

食み跡の中には、つい最近ジュゴンが食べたことを示す還元層の砂が露出したものもありました。







160115食み跡10









160115クロガシラウミヘビ

食み跡を撮影している目の前をクロガシラウミヘビが横切りました。
コブラ毒を有するウミヘビ類はあまり人を恐れないため、格好の観察対象になります。






160115食み跡7

これも奥まで続く長い食み跡です。







160115スイジガイ

食み跡を探して泳いでいると、スイジガイを見つけました。
スイジガイを見つけるとうれしくなり、つい拾い上げて眺めてしまいますが、
同じスイショウガのなかまのクモガイを見つけても、手が伸びないのはなぜでしょう。






160115食み跡13

本日は2時間ほど泳ぎ、150本以上の食み跡が確認できました。

この海域の海草藻場は、長年ジュゴンが継続して利用してきた重要な餌場です。
安定したこの海草藻場に手を加えることは、けしって許されるものではありません。

この海草藻場を改変することは、絶滅が危惧される日本のジュゴンを殲滅させる行為に他なりません。





  1. 2016/01/16(土) 22:09:49|
  2. ジュゴンの食み跡
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ジュゴンの食み跡

150817_8

北限のジュゴン調査チーム・ザンでは、毎年名護市のとある海域でジュゴンの食性調査を行なっています。
(調査の様子はこちら → 北限のジュゴン調査チーム・ザン ブログ

先日の調査では多くの食み跡が確認出来たので、改めて同じポイントへ行き写真を撮って来ました。




150817_9

海草は、ウミヒルモ、リュウキュウスガモ、ベニアマモ、リュウキュウアマモ、ボウバアマモ、ウミジグサ、マツバウミジグサの7種。
特にベニアマモの比率が高い藻場です。






150817_10

底質が礫分の少ない柔らかい砂のため、ジュゴンは大好きな地下茎を思う存分食べ、
その結果食み跡がくっきりと残り、まるでナスカの地上絵のようでした。

ジュゴンは海草を地下茎ごと食べるため、地下部が食べやすい底質の柔らかい藻場を餌場として選択しています。




150817_11

底質が柔らかいと海草を効率よく食べることができ、一回の呼吸で長い食み跡を作ることになります。







150817_13

私は1998年から複数の場所でジュゴンの食み跡を確認してきましたが、毎年継続して確認出来たのはこの海域だけです。

これはこの海域の海草藻場が健全な状態にあるばかりでなく、ジュゴンが好む餌場の条件(地形、底質、人間活動など)
を兼ね備えた、数少ない貴重な海域であることを示しています。




150817_6

しかし、こともあろうに沖縄防衛局が設置した普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会では、
この貴重な海域に人工的な藻場を造成することが検討されています。

これは、辺野古の新基地建設現場にジュゴンが近付かなくてすむように、
現在ジュゴンが既に餌場として利用しているこの海域に新たに藻場を造成するというものです。

この提案は絶滅に瀕する日本産ジュゴンの存続に重大な影響を与える危険性があることから、
今年の4月、ジュゴンネットワーク沖縄と北限のジュゴン調査チーム・ザンから沖縄県に対して、造成の許可を出さないよう要望書を提出しました。


150817_7

要望の理由は

・人工的に造成された海草藻場で実際にジュゴンが採餌したという事例はなく、
そのような不確実な実験を絶滅に瀕するジュゴンが安定的に利用してきた数少ない餌場で行なうことは、
日本産ジュゴンの存続に重大な影響を与える危険性があること。

・提案されたヤシマットを利用した海草の移植は、海草を地下ごと食べるジュゴンの食性を理解しておらず、
そのようなジュゴンが利用出来ない造成藻場が広がれば、いずれジュゴンはこの最後に残された安全な採餌場を放棄せざるを得なくなる危険性があること。
(この海域はジュゴンを混獲するおそれのある定置網漁、刺網漁が行なわれておらず、ジュゴンにとって安全な海域でもあります。)

・藻場の造成の前例となる泡瀬干潟で行なわれた海草の移植について、
中城湾泡瀬地区埋め立て事業の環境保全・創造検討委員会第二回会合で海藻草類専門部会座長野呂忠彦委員(鹿児島大教授)は
「移植によって藻場が保全されるとは考えていない、このまま評価書に書いてあるというだけで突き進めば取り返しのつかないところにいく」と述べていること。
(2007年3月14日琉球新報)

・沖縄の海藻草類を研究されてきた当真武氏は、自らの著書「沖縄の海藻と海草」の中で、
泡瀬干潟に海草藻場が大規模に存在する理由を地形と潮流の関係から解説している通り(156p)、
海草は生える環境には既に生えており、生えない環境に植えてもいずれ姿を消し、人為的に面積を増やすことは非常に困難であること。
また、海草の定着に重点を置き、波の影響を低減させる囲い等を設置すれば、増々ジュゴンを遠ざける結果になること。

などが挙げられます。

150817_5

ジュゴンがどこで海草を食べるかは、ジュゴンが決めること。

また、海草は生える場所には既に生えており、人間の都合で人為的に操作することは愚かなこと。

人間に唯一出来ることはジュゴンが安全に棲める場所を残し、海草がこれ以上減らないよう環境を守ることだけだと、肝に銘じなければいけません。










  1. 2015/08/21(金) 12:45:32|
  2. ジュゴンの食み跡
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ジュゴンの海 その2

150509食み跡調査1
(2015年5月9日、ジュゴンの食み跡にカメラを近づける調査員)

去る5月9日、大浦湾でジュゴンの食み跡調査を行ないました。
今回の調査は、北限のジュゴン調査チーム・ザン、ダイビングチームレインボー、ジュゴンネットワーク沖縄による合同調査です。
調査地は先月4月15日に35本以上の食み跡を確認したチリビシ沖水深19〜20mのポイントです。


150509食み跡調査2
(2015年5月9日、今回は鮮明な食み跡は少なかった)

このポイントでの食み跡の確認は、2013年3月28日、2015年4月15に続き3度目で、今回は新たに8本の食み跡が確認できました。

ところで沖縄の海草の多くは水深4mより浅い海に生えていますが、なぜジュゴンは効率の悪い深い場所で海草を食べているのでしょうか。
現在大浦湾では普天間飛行場代替施設建設に伴うボーリング調査、大型コンクリートブロックの投下、
長大なブイの設置やおびただしい数の船舶の航行があり、以前のように浅場で海草の採餌ができなくなったという事実はあります。
しかし、2013年3月に19.6mの深場で食み跡が確認された当時は、同じ時期にキャンプシュワブ東の美謝川河口地先の浅場でも食み跡が確認されており、
浅場での採餌が可能な時でさえ、わざわざ深場の海草を食べていたことがわかっています。
ちなみに池田和子さんの著書「ジュゴン」によると、オーストラリアのジュゴンの潜水時間は平均2.7分、また潜水深度の約72%が3m以浅だそうです。


150509食み跡調査3
(2015年5月9日、比較的分かりやすい食み跡)

その理由について、沖縄のジュゴンは深場で餌を摂らなければ生き残れない事情があったからだと私は考えています。
ジュゴンの体重は250〜400kgで、一日に体重のおよそ8%の海草を摂る必要があり、
大量の海草を摂るのために一日8時間以上を採餌に費やすといわれています。



150509食み跡調査4
(2015年5月9日、同じ食み跡を別の角度から)

オーストラリアのようにジュゴン保護区が設けられた場所では、日中安心して浅いイノーで多くの時間を採餌に費やすことができます。
一方人間活動が盛んで保護区もない沖縄では、ジュゴンは人間活動の少ない夜間に浅いイノーへ入り採餌すると考えられ、
人間活動が盛んな日中はイノーの中で採餌する姿は殆ど確認されていません。
ところが海では一日に二回潮が引き、夜間十分に海草が食べられない時期があります。
そんな時沖縄のジュゴンは日中今回のポイントのような深い場所で餌を摂っているのではないかと考えています。


150509食み跡調査5
(2015年5月9日)

これは今回食み跡が確認されたトゲウミヒルモの海草藻場です。





150509食み跡調査6
(2015年5月9日)

5〜7月に開花結実するといわれており、二枚の葉の根元につぼみも確認できます。
海水に入れておかなかったので、元気がなくなった状態です。




150509食み跡調査7
(2015年5月9日)

写真のように葉の表面に毛が生えていることから、トゲウミヒルモと名付けられました。
トゲウミヒルモは沖縄に分布するウミヒルモ属の中ではもっとも水深の深い場所に適応した仲間です。
日本海草図譜によると「水深15〜18mの珊瑚砂の海底に生える」とありますが、
環境省の調査では名護湾の水深34mの場所でウミヒルモ属の確認があり(環境省2004)
おそらくこのトゲウミヒルモではないかと思われます。

世界のジュゴン分布域の中でも人間活動が盛んな沖縄島に、現在までジュゴンが生き残れたのは、
沖縄の海にこのトゲウミヒルモが分布していたことも、要因の一つかもしれません。



  1. 2015/05/11(月) 16:11:10|
  2. ジュゴンの食み跡
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ジュゴンの海 その1

国は沖縄県民の民意を無視し、およそ環境アセスとは呼べないでたらめなアセスを根拠に、環境破壊が明確な辺野古基地建設を強引に開始しました。
1月28日朝には、とうとう大型クレーン船から浮具を固定するための数十トン規模のコンクリートブロックを投入してしました。

日々、それも着実に辺野古の海が壊されて行く中、近隣のジュゴンの餌場が心配になり、昨日29日に確認しに行って来ました。

私はこの海域で1998年から継続的にジュゴンの食み跡を確認していますが、
ここは現存する日本産ジュゴンにとって、もっとも重要な餌場だと考えています。(故に地名は伏せさせて頂きます。)


150129食み跡1

海に入ると早速食み跡を確認。ひとまずほっとしました。
この辺りは6種類の海草が生える、比較的被度が高い藻場です。




150129食み跡6

その直ぐ横にはジュゴンが海草を密に食べた跡もありました。
ジュゴンは大好きな海草ウミヒルを食べるために、パイオニア種というウミヒルもの性質を利用して、
同じ場所で海草を繰り返し採餌することによって、効率よくウミヒルもを得る耕作的採餌?を行なうことが知られています。



150129オオウミヒルモ

これがそのウミヒルモの仲間のオオウミヒルモ。
丸い葉がかわいい愛らしい海草です。





150129食み跡2

沖縄は台風の通り道に位置するため、大型の台風が接近する度にジュゴンの餌場である海草藻場も撹乱されます。
この海域でも過去に大きな台風が直撃し、波浪による砂の移動で海草藻場が大規模に埋まり、
ジュゴンが採餌できない状況が作られたことがありました。
台風による撹乱が比較的少なかったこのポイントは、その後利用頻度が高くなりました。



150129オキナワモズク2

辺りを見回すと天然のモズクが生えていました。
今年は生育状態がいいようです。





150129食み跡3

しばらく行くと比較的新しい食み跡がありました。
食み跡の状況から、おそらくほんの数日前に食べた跡だと思います。





150129イソスギナ

沖縄の冬の海に姿を見せるイソスギナもありました。






150129カサノリ

そしてこちらも冬のイノーで見られるカサノリ。
小さな番傘をひっくり返したような形がかわいい緑藻類の仲間で、
奄美大島から八重山諸島に分布する日本固有種です。




150129食み跡5

この食み跡は周りの砂と比べやや青味がかっています。
これはジュゴンの採餌によって砂が掘り起こされ、地下にあった還元層が露出したためです。
ジュゴンは海草を地下茎ごと掘り起こして食べるので、食み跡にはしばしばこの還元層が確認出来ます。
海底は波や流れで撹乱され砂は移動し、また酸素にも触れるので、この還元層が確認出来る状態の食み跡は、比較的新しいものと判断出来ます。



150129マイクロアトール

これはハマサンゴのマイクロアトール。
ここは生きたサンゴも点在する、健全な海草藻場です。





150129魚

海草藻場の中のサンゴは魚たちの絶好の隠れ家となり、その結果魚も豊富です。






150129食み跡7

こちらはジュゴンが気の向くまま採餌した結果、複雑に交差した食み跡が残ったようです。

新聞報道によると、沖縄防衛局が設置した環境監視等検討委員会では、
ジュゴンが埋立区域に近付かないよう、この海草藻場の造成も提案されていたと言うことですが、とんでもない話しです。

そもそも沖縄島の海草藻場の分布が東海岸に集中しているのは、沖縄島の向きが真北ではなく時計回りに傾いているため、
東海岸は西海岸に比べ冬場の強い北風の影響を受けにくいからという説があります。
また東海岸のこの海域では、岬に守られた場所では海草藻場が安定し、潮通しのよい場所では台風の影響も受けやすく変化が激しい傾向があります。
さらに海草藻場の生育は、陸地からの湧水の恵(栄養塩、地下温度の安定など)に大きく影響を受けているとも言われています。

つまり、海草は生える環境には既に生えているし、生えない環境に植えても育つことが出来ないと言うことです。
そんな自然のバランスで成立している海草藻場を人間が「造成」とは、人間の技術を過信するのもいい加減辞めて頂きたい!
実際、海草の移植で成功した亊例は皆無だし、むしろ移植先の環境を撹乱する問題が生じているのです。

この海域での海草藻場の造成は、それこそ何万年もジュゴンが利用してきたであろうこの海草藻場を台無しにし、
日本産ジュゴンの絶滅を加速させるだけだと断言します。


150129食み跡9

帰り際、長くて新しい食み跡を見つけました。10m以上はある食み跡です。
よほどここの海草が美味しかったのでしょうか。何分も息をこらえて夢中で食べたのでしょうね。





150129食み跡8

どこで海草を食べるかはジュゴンが決めること。
名ばかりの環境対策によって日本産ジュゴンの重要な餌場を破壊するのは止めて頂きたい。
絶滅が危ぶまれるジュゴンに対して人間が出来ることは、棲息地に危険な漁具を置かず、これ以上棲息地を壊さないことだけなのですから。



  1. 2015/01/30(金) 12:27:18|
  2. ジュゴンの食み跡
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細川太郎

Author:細川太郎
名護に住み、身近な自然のすばらしさに日々感謝しています。宝物は意外と自分の足下にあるものです。

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