名護・自然観察日記

名護で出会った生きものを中心に紹介します。

ジュゴンの食み跡

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北限のジュゴン調査チーム・ザンでは、毎年名護市のとある海域でジュゴンの食性調査を行なっています。
(調査の様子はこちら → 北限のジュゴン調査チーム・ザン ブログ

先日の調査では多くの食み跡が確認出来たので、改めて同じポイントへ行き写真を撮って来ました。




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海草は、ウミヒルモ、リュウキュウスガモ、ベニアマモ、リュウキュウアマモ、ボウバアマモ、ウミジグサ、マツバウミジグサの7種。
特にベニアマモの比率が高い藻場です。






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底質が礫分の少ない柔らかい砂のため、ジュゴンは大好きな地下茎を思う存分食べ、
その結果食み跡がくっきりと残り、まるでナスカの地上絵のようでした。

ジュゴンは海草を地下茎ごと食べるため、地下部が食べやすい底質の柔らかい藻場を餌場として選択しています。




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底質が柔らかいと海草を効率よく食べることができ、一回の呼吸で長い食み跡を作ることになります。







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私は1998年から複数の場所でジュゴンの食み跡を確認してきましたが、毎年継続して確認出来たのはこの海域だけです。

これはこの海域の海草藻場が健全な状態にあるばかりでなく、ジュゴンが好む餌場の条件(地形、底質、人間活動など)
を兼ね備えた、数少ない貴重な海域であることを示しています。




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しかし、こともあろうに沖縄防衛局が設置した普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会では、
この貴重な海域に人工的な藻場を造成することが検討されています。

これは、辺野古の新基地建設現場にジュゴンが近付かなくてすむように、
現在ジュゴンが既に餌場として利用しているこの海域に新たに藻場を造成するというものです。

この提案は絶滅に瀕する日本産ジュゴンの存続に重大な影響を与える危険性があることから、
今年の4月、ジュゴンネットワーク沖縄と北限のジュゴン調査チーム・ザンから沖縄県に対して、造成の許可を出さないよう要望書を提出しました。


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要望の理由は

・人工的に造成された海草藻場で実際にジュゴンが採餌したという事例はなく、
そのような不確実な実験を絶滅に瀕するジュゴンが安定的に利用してきた数少ない餌場で行なうことは、
日本産ジュゴンの存続に重大な影響を与える危険性があること。

・提案されたヤシマットを利用した海草の移植は、海草を地下ごと食べるジュゴンの食性を理解しておらず、
そのようなジュゴンが利用出来ない造成藻場が広がれば、いずれジュゴンはこの最後に残された安全な採餌場を放棄せざるを得なくなる危険性があること。
(この海域はジュゴンを混獲するおそれのある定置網漁、刺網漁が行なわれておらず、ジュゴンにとって安全な海域でもあります。)

・藻場の造成の前例となる泡瀬干潟で行なわれた海草の移植について、
中城湾泡瀬地区埋め立て事業の環境保全・創造検討委員会第二回会合で海藻草類専門部会座長野呂忠彦委員(鹿児島大教授)は
「移植によって藻場が保全されるとは考えていない、このまま評価書に書いてあるというだけで突き進めば取り返しのつかないところにいく」と述べていること。
(2007年3月14日琉球新報)

・沖縄の海藻草類を研究されてきた当真武氏は、自らの著書「沖縄の海藻と海草」の中で、
泡瀬干潟に海草藻場が大規模に存在する理由を地形と潮流の関係から解説している通り(156p)、
海草は生える環境には既に生えており、生えない環境に植えてもいずれ姿を消し、人為的に面積を増やすことは非常に困難であること。
また、海草の定着に重点を置き、波の影響を低減させる囲い等を設置すれば、増々ジュゴンを遠ざける結果になること。

などが挙げられます。

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ジュゴンがどこで海草を食べるかは、ジュゴンが決めること。

また、海草は生える場所には既に生えており、人間の都合で人為的に操作することは愚かなこと。

人間に唯一出来ることはジュゴンが安全に棲める場所を残し、海草がこれ以上減らないよう環境を守ることだけだと、肝に銘じなければいけません。










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  1. 2015/08/21(金) 12:45:32|
  2. ジュゴンの食み跡
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細川太郎

Author:細川太郎
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