名護・自然観察日記

名護で出会った生きものを中心に紹介します。

ジュゴンの海 その2

150509食み跡調査1
(2015年5月9日、ジュゴンの食み跡にカメラを近づける調査員)

去る5月9日、大浦湾でジュゴンの食み跡調査を行ないました。
今回の調査は、北限のジュゴン調査チーム・ザン、ダイビングチームレインボー、ジュゴンネットワーク沖縄による合同調査です。
調査地は先月4月15日に35本以上の食み跡を確認したチリビシ沖水深19〜20mのポイントです。


150509食み跡調査2
(2015年5月9日、今回は鮮明な食み跡は少なかった)

このポイントでの食み跡の確認は、2013年3月28日、2015年4月15に続き3度目で、今回は新たに8本の食み跡が確認できました。

ところで沖縄の海草の多くは水深4mより浅い海に生えていますが、なぜジュゴンは効率の悪い深い場所で海草を食べているのでしょうか。
現在大浦湾では普天間飛行場代替施設建設に伴うボーリング調査、大型コンクリートブロックの投下、
長大なブイの設置やおびただしい数の船舶の航行があり、以前のように浅場で海草の採餌ができなくなったという事実はあります。
しかし、2013年3月に19.6mの深場で食み跡が確認された当時は、同じ時期にキャンプシュワブ東の美謝川河口地先の浅場でも食み跡が確認されており、
浅場での採餌が可能な時でさえ、わざわざ深場の海草を食べていたことがわかっています。
ちなみに池田和子さんの著書「ジュゴン」によると、オーストラリアのジュゴンの潜水時間は平均2.7分、また潜水深度の約72%が3m以浅だそうです。


150509食み跡調査3
(2015年5月9日、比較的分かりやすい食み跡)

その理由について、沖縄のジュゴンは深場で餌を摂らなければ生き残れない事情があったからだと私は考えています。
ジュゴンの体重は250〜400kgで、一日に体重のおよそ8%の海草を摂る必要があり、
大量の海草を摂るのために一日8時間以上を採餌に費やすといわれています。



150509食み跡調査4
(2015年5月9日、同じ食み跡を別の角度から)

オーストラリアのようにジュゴン保護区が設けられた場所では、日中安心して浅いイノーで多くの時間を採餌に費やすことができます。
一方人間活動が盛んで保護区もない沖縄では、ジュゴンは人間活動の少ない夜間に浅いイノーへ入り採餌すると考えられ、
人間活動が盛んな日中はイノーの中で採餌する姿は殆ど確認されていません。
ところが海では一日に二回潮が引き、夜間十分に海草が食べられない時期があります。
そんな時沖縄のジュゴンは日中今回のポイントのような深い場所で餌を摂っているのではないかと考えています。


150509食み跡調査5
(2015年5月9日)

これは今回食み跡が確認されたトゲウミヒルモの海草藻場です。





150509食み跡調査6
(2015年5月9日)

5〜7月に開花結実するといわれており、二枚の葉の根元につぼみも確認できます。
海水に入れておかなかったので、元気がなくなった状態です。




150509食み跡調査7
(2015年5月9日)

写真のように葉の表面に毛が生えていることから、トゲウミヒルモと名付けられました。
トゲウミヒルモは沖縄に分布するウミヒルモ属の中ではもっとも水深の深い場所に適応した仲間です。
日本海草図譜によると「水深15〜18mの珊瑚砂の海底に生える」とありますが、
環境省の調査では名護湾の水深34mの場所でウミヒルモ属の確認があり(環境省2004)
おそらくこのトゲウミヒルモではないかと思われます。

世界のジュゴン分布域の中でも人間活動が盛んな沖縄島に、現在までジュゴンが生き残れたのは、
沖縄の海にこのトゲウミヒルモが分布していたことも、要因の一つかもしれません。



  1. 2015/05/11(月) 16:11:10|
  2. ジュゴンの食み跡
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ジュゴンの海 その1

国は沖縄県民の民意を無視し、およそ環境アセスとは呼べないでたらめなアセスを根拠に、環境破壊が明確な辺野古基地建設を強引に開始しました。
1月28日朝には、とうとう大型クレーン船から浮具を固定するための数十トン規模のコンクリートブロックを投入してしました。

日々、それも着実に辺野古の海が壊されて行く中、近隣のジュゴンの餌場が心配になり、昨日29日に確認しに行って来ました。

私はこの海域で1998年から継続的にジュゴンの食み跡を確認していますが、
ここは現存する日本産ジュゴンにとって、もっとも重要な餌場だと考えています。(故に地名は伏せさせて頂きます。)


150129食み跡1

海に入ると早速食み跡を確認。ひとまずほっとしました。
この辺りは6種類の海草が生える、比較的被度が高い藻場です。




150129食み跡6

その直ぐ横にはジュゴンが海草を密に食べた跡もありました。
ジュゴンは大好きな海草ウミヒルを食べるために、パイオニア種というウミヒルもの性質を利用して、
同じ場所で海草を繰り返し採餌することによって、効率よくウミヒルもを得る耕作的採餌?を行なうことが知られています。



150129オオウミヒルモ

これがそのウミヒルモの仲間のオオウミヒルモ。
丸い葉がかわいい愛らしい海草です。





150129食み跡2

沖縄は台風の通り道に位置するため、大型の台風が接近する度にジュゴンの餌場である海草藻場も撹乱されます。
この海域でも過去に大きな台風が直撃し、波浪による砂の移動で海草藻場が大規模に埋まり、
ジュゴンが採餌できない状況が作られたことがありました。
台風による撹乱が比較的少なかったこのポイントは、その後利用頻度が高くなりました。



150129オキナワモズク2

辺りを見回すと天然のモズクが生えていました。
今年は生育状態がいいようです。





150129食み跡3

しばらく行くと比較的新しい食み跡がありました。
食み跡の状況から、おそらくほんの数日前に食べた跡だと思います。





150129イソスギナ

沖縄の冬の海に姿を見せるイソスギナもありました。






150129カサノリ

そしてこちらも冬のイノーで見られるカサノリ。
小さな番傘をひっくり返したような形がかわいい緑藻類の仲間で、
奄美大島から八重山諸島に分布する日本固有種です。




150129食み跡5

この食み跡は周りの砂と比べやや青味がかっています。
これはジュゴンの採餌によって砂が掘り起こされ、地下にあった還元層が露出したためです。
ジュゴンは海草を地下茎ごと掘り起こして食べるので、食み跡にはしばしばこの還元層が確認出来ます。
海底は波や流れで撹乱され砂は移動し、また酸素にも触れるので、この還元層が確認出来る状態の食み跡は、比較的新しいものと判断出来ます。



150129マイクロアトール

これはハマサンゴのマイクロアトール。
ここは生きたサンゴも点在する、健全な海草藻場です。





150129魚

海草藻場の中のサンゴは魚たちの絶好の隠れ家となり、その結果魚も豊富です。






150129食み跡7

こちらはジュゴンが気の向くまま採餌した結果、複雑に交差した食み跡が残ったようです。

新聞報道によると、沖縄防衛局が設置した環境監視等検討委員会では、
ジュゴンが埋立区域に近付かないよう、この海草藻場の造成も提案されていたと言うことですが、とんでもない話しです。

そもそも沖縄島の海草藻場の分布が東海岸に集中しているのは、沖縄島の向きが真北ではなく時計回りに傾いているため、
東海岸は西海岸に比べ冬場の強い北風の影響を受けにくいからという説があります。
また東海岸のこの海域では、岬に守られた場所では海草藻場が安定し、潮通しのよい場所では台風の影響も受けやすく変化が激しい傾向があります。
さらに海草藻場の生育は、陸地からの湧水の恵(栄養塩、地下温度の安定など)に大きく影響を受けているとも言われています。

つまり、海草は生える環境には既に生えているし、生えない環境に植えても育つことが出来ないと言うことです。
そんな自然のバランスで成立している海草藻場を人間が「造成」とは、人間の技術を過信するのもいい加減辞めて頂きたい!
実際、海草の移植で成功した亊例は皆無だし、むしろ移植先の環境を撹乱する問題が生じているのです。

この海域での海草藻場の造成は、それこそ何万年もジュゴンが利用してきたであろうこの海草藻場を台無しにし、
日本産ジュゴンの絶滅を加速させるだけだと断言します。


150129食み跡9

帰り際、長くて新しい食み跡を見つけました。10m以上はある食み跡です。
よほどここの海草が美味しかったのでしょうか。何分も息をこらえて夢中で食べたのでしょうね。





150129食み跡8

どこで海草を食べるかはジュゴンが決めること。
名ばかりの環境対策によって日本産ジュゴンの重要な餌場を破壊するのは止めて頂きたい。
絶滅が危ぶまれるジュゴンに対して人間が出来ることは、棲息地に危険な漁具を置かず、これ以上棲息地を壊さないことだけなのですから。



  1. 2015/01/30(金) 12:27:18|
  2. ジュゴンの食み跡
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ジュゴンの食み跡

140430食み跡1

本日は大潮だったので、ジュゴンの食み跡を確認しに行って来ました。

風が納まらず、水面下の食み跡がくっきり撮影出来る状況ではありませんでしたが、

それでも30本前後の食み跡が確認出来、とりあえずジュゴンは元気そうで、一安心しました。


140430カサノリ

干出した藻場には、カサノリもありました。

今年は気温、水温が例年と比べ低いせいか、今の季節としては傘がまだ残っている方だと思います。




140430モズク

今年はモズクも豊作なのか、沢山見かけましたが、成長具合はまだまだといった感じでした。

ちなみにこの海域では、ボウバアマモとモズクの分布が重なっている印象です。

おそらくつぎの大潮の食み跡観察は、半分モズク採りになるはずです。



  1. 2014/04/30(水) 18:56:24|
  2. ジュゴンの食み跡
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
前のページ

プロフィール

細川太郎

Author:細川太郎
名護に住み、身近な自然のすばらしさに日々感謝しています。宝物は意外と自分の足下にあるものです。

※ 写真の無断複写や転用・転載はご遠慮下さい。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (3)
サシバ (7)
タカの渡り (36)
アサギマダラ (3)
ミゾゴイ (2)
クモの巣 (2)
リュウキュウキビタキ (1)
ヤンバルクイナ (1)
ジュゴンの食み跡 (8)
リュウキュウアカショウビン (25)
コゲラ (1)
アマミヤマガラ (1)
ホントウアカヒゲ (2)
クチナシ (1)
リュウキュウハグロトンボ (1)
リュウキュウアオバズク (1)
ヒメアマツバメ (1)
アカハラダカ (4)
カラスバト (1)
ハリオアマツバメ (1)
クロビタイハリオアマツバメ (4)
ハイタカ (6)
アトリ (1)
ハヤブサ (1)
ツミ (1)
リュウキュウイノシシ (1)
ルリビタキ (1)
イボイモリ (4)
オオシマカクムネベニボタル (1)
オキナワルリチラシ (1)
海草 (1)
サガリバナ (1)
サバニ (16)
西表島 (2)
クロツラヘラサギ (1)
リュウキュウメジロ (1)
サツマニシキ (1)
ノグチゲラ (3)
コバノミヤマノボタン (1)
ヒョウモンカワテブクロ (1)
イルカンダ (1)
オリイオオコウモリ (0)
ハチクマ (1)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR